日英通訳?翻訳実践プログラムで大学院生が学部生と合同授業で遠隔同時通訳実習を実施

2024.06.28

2024年6月21日(金)に、大学院の日英通訳?翻訳実践プログラムが、今年度2回目となる同時通訳実習を行いました。学部生向けにオンラインで開講されている「通訳論1」の授業と合同で行われ、大学院生が遠隔同時通訳を行い、合計70名が参加しました。その中から、同時通訳を行った大学院生1名の通訳実習レポートと、同時通訳を実際に聞く体験をした学部生2名の感想を紹介します。

大学院日英通訳?翻訳実践プログラム博士前期課程2年 生井みなみさん

今回の通訳実習では、Zoomの同時通訳機能を使った英日遠隔同時通訳のデモンストレーションを「通訳論1」を受講している学部生に行いました。扱った内容はアメリカの某大学で行われた卒業生に向けたスピーチです。前回のキャンパスツアー形式の通訳実習とはまた内容がガラッと変わり、遠隔(リモート)通訳ならではの、そして卒業生に贈る言葉ならではの、難しさやトラブルがありました。

事前にスピーカーが読み上げる想定スクリプトは与えられていたので、それを用いてリサーチや通し練習などの準備に励みながら、通訳パートナーのクラスメイトと何度も打ち合わせを重ねました。スピーチ中に登場する大学特有の固有名詞や人物名をどう訳すか。文面上だと冗談とも真面目な話ともとれる発言をどう対処するか。「卒業生に向けた人生のアドバイス」はどう訳せば的確に伝わるか。これらについて、前半と後半で異なる通訳者が担当していても、統一性が保たれるように意識しながら、考え続けました。他にも、画面を介して行う通訳だからこそ、声の張りや感情の込め方をより意識する必要などもありました。

そして迎えた肝心の通訳実習当日、練習の成果を発揮することができました。しかしながら、通訳し終えてから、不安定なインターネット環境により私が担当した前半部分の訳出音声が所々途切れたりと、オーディエンスにクリアに聞こえていなかったことがわかりました。幸い、クラスメイトが担当した後半部分は非常にクリアに聞こえていたようなのですが、準備万全で挑んだつもりだった実習がこのような形で終わってしまい、学部生をはじめとする皆さまに万全の同時通訳を届けられなかったことを申し訳なく思います。今回の反省を次に活かせるよう、対策をした上で今後の通訳実習に努めたいと思います。

言語文化学部2年 尾崎京香さん

遠隔同時通訳の機能を使って同時通訳を聞いた感想としては、やはりスピーカーの速いスピードについていける同時通訳が本当にすごいと感じました。実際に生で同時通訳を聞いて、素早い訳出だけでなく、情報の取捨選択やトーンの切り替えなどの工夫をすべて瞬時に行うことができていたのに感動しましたし、同時にこれは生半可な練習ではできないことであるとも感じ、文字通り“訓練”が必要であるのを改めて実感しました。そして、これは決して原稿のみを見た事前準備では行えないことであるとも感じました。通訳は事前準備が非常に重要であると講義を通して学びましたが、ただ訳す原稿のみではなく、あらゆる方面からの事前のリサーチが必要不可欠であり、同時にこれが本番での通訳のパフォーマンスに直結するものであると思いました。

国際社会学部2年 大野いちこさん

今回の講義を通して感じたことは、人の話す言葉は生き生きしているということです。AIが発達し日常の一部になっている現代において、私は実は、翻訳も通訳もAIにできることだから、人間が行う必要性は減少してきているのではないかと考えていました。しかしながら、遠隔同時通訳で大学院生のお二人がその場の雰囲気に合わせた表情や口調、息遣いをもって話し手のメッセージを表現しようとしていたことがとても印象的でした。確かに、言語の変換である通訳自体は、語学力さえあれば誰にでもできるかもしれませんし、AIで事足ります。しかし、人が話す言葉にはいつだって意味があって、メッセージがあるはずです。話し手が表情や身振り手振りを交えて発信したメッセージの感情は、無機質なAIには表現し切れません。そういう点で、コミュニケーション能力や表現力も習得した職業としての「通訳者」は特別な役割を担っているのだと感じました。

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