大学院日英通訳?翻訳実践プログラムでオンラインにて同時通訳実習を実施

2021.01.13

大学院総合国際学研究科の日英通訳?翻訳実践プログラムの「通訳翻訳実践研究2」科目において、今年度は初めてオンラインでの同時通訳実習を行いました。学部生とのコラボレーション授業において、学部生がオーディエンスとなり、学部生が行う発表やスピーチ教材を同時通訳する形式で同時通訳の実習が行われました。
実習を行った大学院生のファム?トゥ?トゥイさんと栗田裕香さん(ともに大学院総合国際学研究科博士前期課程2年、日英通訳?翻訳実践プログラム)のレポートを紹介します。

同時通訳実習①:「通訳?翻訳論ゼミ」とのコラボレーション授業

ファム?トゥ?トゥイさん

2020年11月2日(月)にZoomを通して同時通訳実習のコラボレーション授業を行いました。通訳?翻訳論ゼミの学部3年生が行う発表を大学院生が同時通訳しました。今回の実習は初めてのオンラインでの同時通訳実習となりました。発表内容は翻訳?通訳に関するもので、院生及び学部生双方にとって有益な発表でした。また、今回の実習はそれぞれにとって有意義なものとなりました。

オンラインの同時通訳を経験したことがなかったため、本実習を通していくつかの気づきがありました。
まず、事前準備が大切ということです。これについては日々の授業でも教わっていましたが、いくら言語力が高くても準備をせずに通訳をすることは不可能に近いです。適切な準備と日頃の勉強なしでは正確に訳すことはできません。今回の実習は本番の状況を想定したものであったため、日々の授業での通訳練習とは異なり、強い緊張感を感じましたが、準備が十分であれば自信をもって通訳を行うことが出来るとわかりました。
また、本番で予想外のことが起きる可能性があることを意識する必要もあると気づきました。例としては、音声トラブルによりスピーカーの発言が聞き取りづらくなることや、質疑応答の際にその場で瞬時に対応する必要があることなどです。
ほかにも通訳が終わるまで集中力を切らさないように注意しなければなりません。これは普段あまり意識しておらず、実際に現場で通訳を行うことによって実感できるものであると気づきました。些細なことですが、通訳者の真価が問われる部分ではないかと感じています。

実習後、今回の実習について振り返りを行い、話し合いを通して気づいた点ならびに改善すべき点がいくつか見えてきました。
一つ目は、スピーカーの話し方は千差万別であるという点です。通訳者を気遣ってゆっくり話してくれる人もいますし、早口で話す人もいます。どのような話し方のスピーカーにも対応することが通訳者には求められています。さまざまな話し方のスピーカーに対応できるよう普段から通訳練習をする必要があると考えさせられました。
二つ目は、簡潔かつ正確に内容をまとめるスキルが欠かせないという点です。全部を訳してしまうと情報量が増えてしまうため、通訳を聞いている人には負担になる恐れがあります。何を訳すべきか、何を省くべきかについては、練習を重ねて経験を積むことでしか学んでいけないと気づかされました。
最後に、同時通訳はリアルタイムで行う作業であるため、いくら準備しても先ほど述べたように不測の事態が発生することは珍しくありません。その時、通訳者にできるのは落ち着いて取り組むことではないかと気づきました。精神面の改善は難しいと感じていますが、今回の実習により、ある程度精神的に強くなったと実感できました。
今年は手机赌博官网_外围足球app-游戏平台感染拡大が同時通訳の世界にも大きな変化をもたらしています。会場に行く代わりに、オンライン上で通訳をするようにもなっており、おそらく今後もこのような形が続いていくと言われています。今回の実習に参加したことで同時通訳の現場に近い状況を体感することができて良かったです。授業で学んだ技術と知識を活用し、時代の変化に沿った新たな同時通訳の形をよく理解することが今後求められていくと感じました。

同時通訳実習②:「通訳概論」クラスとのコラボレーション授業

栗田 裕香さん

2020年12月11日(金)に通訳概論のオンライン授業内で同時通訳実習を行いました。受講している学部生は、ある講演のスピーチを同時通訳することになったという設定で事前に渡されたスピーチ原稿をもとに翻訳課題に取り組んでおり、本授業ではそのスピーチを大学院生2名が動画に合わせて実際に同時通訳しました。オンライン上での実習ではありましたが、オーディエンスが前回の実習よりも増えた中での通訳だったため、一層緊張感をもって実習に臨むことができました。

本実習を通して学んだことは大きく二点あります。
一点目は、通訳者としての話し方についてです。通訳は耳で聞くため声のみで情報を伝えなくてはなりません。そのため、普段よりも意識的にはっきりと話す必要があります。例えば、単語の発音やアクセントなどが曖昧あるいは誤っていると、聞き手には正しく理解されない恐れがあります。それゆえに今回は話し方を意識して通訳をするように心がけました。その結果、受講生から通訳の内容に関するコメントを多くもらえ、訳がきちんと伝わっていたことを実感することができました。これは、オーディエンスがいて初めて気づくことができる部分でした。
二点目は、不測の事態に対応する臨機応変さを身につける必要性についてです。前回の実習でも感じましたが、オンライン上での通訳では通信環境の問題や音声トラブルなど、現場で行う通訳同様にさまざまな問題が起こりえます。例えば、今回は音声が一部途切れてしまうというトラブルが発生しました。しかし、その際にも慌ててしまうことなく、原稿や動画の字幕をもとに落ち着いて通訳しました。そうすることで特に問題なく通訳を終えることができました。このように、思いもよらない出来事が起こった時こそ冷静に落ち着いて対処することが通訳の現場では求められるということを身をもって実感しました。

また、通訳後には学部生からコメントや質問を受ける時間がありました。その中で訳出に関する細かな工夫や通訳時に気をつけていることなど、質問への回答を通して自分の考えを再度整理することができたような気がします。他には、「通訳が参考になった」「新しい角度の考えを得られた」などのコメントをもらうことができたことは素直に嬉しかったです。未熟な点ばかりですが、少しでも参考になる部分があれば実習としてお互いに意義のあるものだったのではないかと考えています。

オーディエンスのいる環境で通訳をする機会はあまりないため、今回の実習は大変貴重な経験でした。本実習を通して通訳者としての話し方や心構えなどを学ぶことができ、参考になるコメントも多くもらうことができました。今回の経験をいかして、今後も通訳訓練に励みたいと思います。

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